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京都地方裁判所 昭和53年(行ウ)8号 判決 1979年2月23日

京都市西京区松尾大利町五五番地の四五

原告

柴田産業株式会社

右代表者代表取締役

柴田昭雄

右訴訟代理人弁護士

上羽光男

京都市右京区西院上花田町一〇番地

被告

右京税務署長 前田功

右指定代理人

高須要子

清家順一

曾我謙慎

高田正子

谷本巍

西浜温夫

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告が昭和五一年一〇月三〇日付で原告の昭和五〇年五月一日から同五一年四月三〇日までの事業年度の法人税額を金一、四五三、九〇〇円とした更正及び過少申告加算税金七二、六〇〇円の賦課決定を取消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文と同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告は昭和四七年五月一八月設立された不動産の売買及びその仲介業等を営む法人であり、その事業年度は第一期が昭和四七年五月一八日から同四八年四月三〇日、第二期が昭和四八年五月一日から同四九年四月三〇日、第三期が昭和四九年五月一日から同五〇年四月三〇日、第四期が昭和五〇年五月一日から同五一年四月三〇日である。

2  原告は第四期事業年度の法人税の所得金額の確定申告として、昭和五一年六月三〇日、第三期事業年度の欠損金六、一五八、八五八円を第四期事業年度の所得金額五、一九三、六三五円に繰越算入したうえ、所得なしと申告したところ、被告は、昭和五一年一〇月三〇日、第四期の所得金額を五、一九三、六三五円、税額一、四五三、九〇〇円と更正(以下「本件更正」という。)し、同時に過少申告加算税額七二、六〇〇円とする賦課決定(以下「本件決定」という。)をなした。原告は右処分を不服として昭和五一年一一月二五日被告に異議を申立てたが、同五二年一月三一日これを棄却され(同年二月九日右決定謄本受領)、さらに国税不服審判所長に対し審査請求したところ、同五二年一二月八日棄却され、同月二三日右裁決書謄本の送達を受けた。

3  ところで、原告は、昭和四九年四月三〇日被告に対し、税理士牧野登を介し、青色申告の承認申請をなし、第三期事業年度につき青色申告をなし、同期の欠損金六、一五六、八五八円を次期繰越として申告した。

4  したがって、原告の第四期事業年度の確定申告は青色申告によるものというべきところ、本件更正及び本件決定は青色申告法人としての欠損金の繰越しを認めておらず、法人税法(以下単に「法」という)五七条一項、二項に違反し、違法である。

よってその取消しを求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1、2は認める。

2  同3は否認し、同4は争う。

三  被告の主張

本件処分は以下の理由により適法である。

すなわち、原告の第四期事業年度において、法五七条一項の適用があるためには、同条二項により、原告主張の欠損金の生じた第三期事業年度について青色申告書である確定申告書を提出し、かつその後において連続して確定申告書を提出している必要があるところ、原告はその設立時である昭和四七年五月一八日から同四九年四月三〇日までに法一二二条所定の青色申告承認申請をなしておらず、被告の確定申告書は青色申告書によるものとはいえず、法五七条一項を適用しえないところであるから、第四期事業年度法人税について、原告の申告どおりの所得金額五、一九三、六三五円の所得のあるものとしてなした本件更正及び本件決定は適法である。

四  被告の主張に対する認否

被告の主張は争う。

第三証拠

一  原告

1  証人牧野登

2  乙号証の成立はすべて認める。

二  被告

1  乙第一ないし第三号証

2  証人津野聡

理由

一  請求原因12の事実については当事者間に争いがない。

二  そこで原告がその主張する昭和四九年四月三〇日に被告に青色申告承認申請をしたか否かにつき判断する。

証人牧野登の証言中には、同人が昭和四九年四月末に事務員の赤木康弘をして原告の被告宛の青色申告承認申請書を作成させ、同事務員に右申請書を右京税務署に持参させて提出し、その申請書控を直接原告代表者の柴田昭雄に手交させた旨の供述があるが、一方、成立に争いのない乙第一ないし第三号証、証人津野聡の証言によると、被告の法人税の青色申告承認申請に関する一般事務整理簿には昭和四九年四月中に原告が青色申告承認申請書を提出した旨の記載がないこと、当時右京税務署内において申請書類が紛失した例がないこと及び右のような申請書が提出されれば、必ず申請書の控が申請人に交付される事実が認められるのであり、かつ、原告は右青色申請書控を現在所持していないのであるから、証人牧野登の前記供述のみによって直ちに原告主張の青色申告承認申請の事実を認め難く、他にこの事実を認めるに足る証拠は無い。

三  また、およそ内国法人につきある事業年度における欠損金の繰越しが認められるためには、右欠損金を生じた事業年度において青色申告書である確定申告書を提出し、かつ、その後においても連続して確定申告書を提出していることが要件とされ(法五七条参照)、右青色申告書による確定申告が認められるためには当該事業年度開始日の前日までに青色申告承認申請書を所轄税務署長に提出する必要がある(法一二二条一項)ところ、原告の全立証によるも、原告の第三期事業年度につき青色申告承認申請をなしたとの事実を認めるに足るものはない。

四  そうすると原告の第四期事業年度の法人税につき法五七条一項を適用すべきであるとの原告の主張は理由がなく、右規定を適用せずになされた本件更正及び本件決定について原告主張のような違法は無い。

即ち、原告の右事業年度の所得金額が五、一九三、六三五円であること及び原告が所得無しとして確定申告をなしたことは争いない事実であり、この事実によれば、本件更正及び本件決定は適法なものというべきである。

五  よって、原告の本訴請求には理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 石井玄 裁判官 野崎薫子)

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